Story Of My Life Side-Y phase-3

話を静かに聞いていた滝田は涙目になっていた。

「なんだよ良。目真っ赤だぞ。・・・あー何か湿った空気にしちまったなぁ」

そう言ってグラスを煽る。

「大下さんには大事な家族も居て、大下さんを受け止めてくれる人がいたんスね・・・だから、立派に更生したんスね・・・」

涙をボロボロと流しながら滝田はそう言った。

「・・・良、勘違いするな。こいつは更生なんてしてないぞ。今でもたっぷり悪いことばかりしてる」
「ちょっ!タカ!!人がせっかくいい話してるのに水差すな!」

勇次はそう言って抗議をするが実際その頃に身につけた様々な「悪いクセ」は今でも現役である。
敏樹はクックと笑って滝田の空になりかけたグラスに酒を注ぐ。

―――ユウジらしい話、だな

茶化してみたものの、勇次の警察官になった理由に妙に納得してしまった。
導いてくれた人がいたから今こうしてここにいる。
元々の性格もあったのだろうが、何となく勇次が被害者にも加害者にも妙に肩入れする理由が解った気がする。
恐らくはその刑事の影響なのだろう。
そしてその刑事が勇次にとっては理想像なのだろうとも思った。

ちょっとカッコつけて話したせいもあったのだろうか、それとも酒のせいか。
勇次の顔は少し赤かった。
前に弟の就職祝いで必死に悩んでいた姿を思い出した。
今でもしっかり「お兄ちゃん」をしているところもまた、勇次らしい。

「ところで良。お前きちんと働きたいんだろ?どっかアテはあるのか?」

話題を変えたいらしく勇次がそう聞くと、滝田はハァ、とため息を吐いて項垂れた。

「しばらくは職安通いッスよ・・・でもここのところ景気が悪いからかなり難しいでしょうね。今から先が思いやられますよ・・・」
「オレもなぁ、色々ツテを頼ってみたんだけどなかなか無くってなぁ・・・」

勇次は滝田の出所が決まると様々なところに頼み込んでみていたが、前科者というのもあり、またそれ以前にこの不景気でなかなか人を雇うことが出来ないという返答ばかりだった。
求人募集しているところでもやはり前科というのはとても大きく、他の従業員のことも考えると無理という返答も多かったことも確かだ。
あの頃に比べたら滝田の性格は非常に大人しく、礼儀もそれなりにある。
刑務所では真面目に働き、礼儀正しい模範囚であったと刑務官も話していたくらいだ。
だが世間ではそれらのことは通用しない。
人を殺めてしまったという事実は消えないのだから。

二人がうーん、と悩んでいると敏樹が胸ポケットからメモ用紙を取り出した。

「どうしても見付からないんだったら、ここ行ってみるか?」
「タカ・・・お前も探しててくれたのか!?」
「・・・そ、そういうわけじゃない・・・人手が足りないって嘆いてるの知ってたから一応話してみた・・・っておいユウジ!!」

話している最中に勇次は敏樹に思いっきり抱き着いていた。
と同時に滝田も敏樹に抱き着いていた。

「「ありがとう「タカ」「鷹山さん」!!」」
「ああもう、くっつくな暑苦しい!まだ決まった訳じゃない!一応話はするってアポとったまでだっての!!」
「「それでもありがとう「タカァ〜」「鷹山さぁ〜ん」!!」」

二人が敏樹から離れたのはそれから十分ほど後の話だった。



それから数日後。
そこは市内にあるとあるバイク屋だった。
店を定時に閉めてから滝田の面接が始まった。
店の社長だけでなく、社長夫人と従業員全員。それに勇次と敏樹も同席することとなった。